姿勢を変えることができないほどの重度な要介護者の場合、口腔ケアも決して容易ではありません。口腔ケアは口内の汚れを取り除き、清潔に保つことが目的なので丁寧に行う必要があります。見えない部分の汚れを取り除くには座った姿勢で口腔ケアを行うのが最善ですが、寝たきりの状態から姿勢を変えることができない要介護者に対しては、手順を工夫する必要があります。外から見える部分の汚れをガーゼなどで拭き取り、汚れや唾液を誤って飲み込まないように吸引ポンプを使います。口を開けることが困難な場合、あごの筋肉にマッサージを施して自然に開くように促すのが正しい対処法です。ベッドのリクライニング機能を使って姿勢を人為的に変える方法もあります。
口腔ケアの手順は口内をゆすいで大きな汚れを取り除き、次いで歯ブラシを使って歯や舌などを綺麗にします。最後に再び口をゆすいで汚れをすべて排出する基本的な流れは変わりません。しかし、座った姿勢を保つことができない重度の要介護者については、それぞれの手順において他者の介助が不可欠です。要介護者によっては口をゆすぐことができないので、代わりに専用のガーゼやスポンジブラシを使って丁寧に汚れを取り除きます。
口内が乾燥していると細菌が繁殖して不潔な状態になるので、歯磨きの後は保湿剤を塗布することも忘れてはいけません。口腔ケアの手順は誰でもほぼ同じですが、要介護者については誤嚥を避けつつ汚れを完全に除去することを心がけましょう。